09 // 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. // 11

その5 




「お~き~ろ~~~~」
ソレイユが一人寝ている男と格闘して、はや十分が経過していた。
「起きろってば!」
 不貞寝から本寝に入ってしまった男性は、寝起きが悪くちょっとやそっとじゃ起きないのはクランでも有名な話だ。
「トリプルスラッシュやってみる?」
グラディエーターの男性が構えてみるが、それはやめろとみんなが制した。
「あら、ナイトメアちょっと切れ味悪くなってきたわね……」
キエラは召喚した剣の状態を見ると、砥ぎ石を出して手入れし始めた。
 シャーキシャーキと砥がれる音が何かを含んでいるような気がしてしょうがない――――
 みんなは一抹の不安を隠せないと、案の定……研ぎ終わった剣を手に寝ている男性に近づいてくる。
 そして、ソレイユに嬉しそうに微笑(びしょう)を向けたのだ。
「斬っていい?」
「斬らないで下さい……」
 即座に返されるセリフ――
「斬ってみたいわ」
「イイエ、モッタイナイ……」
「どっちが?」
「ナイトメアソード」
 棒読みで繰り広げる会話に笑いを隠せない面々――だが、話しているうちに彼女の言葉に力がこもって来る。
「このくだらない男はさっさと斬ってしまったほうがましだわ……」
「……本気?」
「本気よ!」
 みんなに来る殺気がどれほどのものかを感じ取った後、彼女は渾身の力を込めて剣を叩き込んだ。
 やはり、ダーククリスタル軽装備を着るほどの冒険者としての意地だろうか……途端に飛び起きてその攻撃を避けていた。
「フッ惜しかったわ……」
「おおおお――――お……俺を殺す気か!」
本当に残念がる女性に飛び起きた男性は、心臓の鼓動が頭に響くほど驚いていた。
「これくらいしないと起きないでしょ? もう、みんな用意できてるわよ」
「しかし、やりすぎだよ……」
ソレイユは彼が寝ていた部分を見ていた。彼女の繰り出した剣の跡がザックリと地面に残っていたのだ。もし、避けられずにそのままだったらと思うと……身震いする羽目になる。
「意外と……乱暴なのね……」
呆れたダンサーの女性が彼女を怪物を見る目で見つめていた。
「これくらいうちのクランでは普通だけど――ナイフ飛んできたり……大体は、人が飛び込んでくるけど……」
「……それって……夜這い……?」
「お蔭でその前に攻撃する術を身に着けたわ。飛び込まれる前に反撃できるようになったし……」
「どんなクランよ……」
「それは、秘密」
「……そんなこと会得するクランは秘密にしておいて――怖いから……」
 ダンサーの女性は頭の片隅にあることを思い浮かべていた。彼女のクランは暗殺系の人が足を洗って結成されたらしい……よって、そこで鍛えられた彼女はそれなりの技術を身に着けていると言う事だ。おそらく、ここに居る者たちを動けなくさせる事も可能だろう――そう思うと身震いが襲ってくる。
 そして、周りにいるみんなにも話すべきでないと判断した。というか……あれこれ抗議するホークアイの男性が一番口が軽いのだ。まあ、彼女の素性を聞いていないと判断したからその上で口の堅そうな面々に話したわけであるが……知ったらどうなるだろうか……という後の反応も気になるのも事実であった。
 この頃、話を聞いたみんなはある思いを撤回していた。どこか危なっかしい一面もあってみんな気になるというところだった。彼女の行動が豪快で攻撃的なので、見ていてハラハラして別な意味で危ないと言う事に訂正する。
-- 続きを読む --

[edit]

その4 




 この後、みんなは適当な場所を見つけて狩りをしていた。アンデット系が多いのもあってソレイユの働きは大きかった。
 一様テンプルナイトの彼はアンデット防御のスキルを会得していて、割り合い防御を受けにくいのだ。おまけにアンデット攻撃の補助を受けており攻撃もまあまあ良かった。
 他のみんなも補助を受けていて普通より早く敵を殲滅していく。
 こんな状況見たことあるな――とキエラは感じていた。それは最初で最後かもしれない父と叔父と自分の三人でネクロポリスに行った時だ。発掘され始めたダンジョンの偵察に二人は訪れていて、それがエルフ村とダークエルフ村の境界区域だったため腕慣らしにとキエラもまだ若いながらも誘われたのだ。
 父はサブクラスでエルダーになっていた。気立ての優しい彼は他の種族に関して寛大でありすぐ打ち解ける性格で、他の種族の仲間の事を嬉しそうに話していた。
 一方叔父は世界樹から受け継がれた歴史のせいか、その話をされると顔をしかめていた。エルフ以外の種族を毛嫌いし、ダークエルフに関しては憎しみさえ持っている彼にとってこの手の話は不快以外何物でもないのだ。
 まあ、父に小さい頃から面倒見てもらって戦い方を教えられ、おまけに尊敬しているぶんその不快さは増しているのだろうが……
 適当に調査した後、エルフ村に帰ってきて三人で楽しく歌ったのを覚えている。その曲は、確か――
 ふと、戦いの中みんなの耳に歌が聞こえてくる。見ると、キエラが小さな声で歌っていたのだ。
「あ……どうしたの?」
ソレイユの声に無意識に歌っていたのに気が付いて、彼女はみんなの顔を見ていた。
「ごめんなさい――違う事考えていて……」
「余裕だね――」
「皆さんの戦い方が旨いし、タンカーの腕もいいから、昔の事思いだして……」
「じゃあ、思い出せないほど働いてもらおうか……」
 エルは弓に持ち替えると前方の群れに向かって矢を撃ったのだ。途端に全部が来る羽目になる。
「馬鹿――――――――!! エロの馬鹿――――――!」
泣きながらソレイユはヘイトオーラをすると、みんなも慌ててモンスターを叩く事になる。
「あ、ターゲットリーダー俺だった」
それに気が付いた彼は自分がしてしまった事にやっと気が付いたのだ。自業自得とはこのことか――――
-- 続きを読む --

[edit]

その3 





 みんなは出来合いで作った昼食に舌鼓を打っている。お世辞にも豪華とはいえないパンと魚のスープと干し肉という素朴なものであったが、働いた後の食事なのでみんなは美味い美味いと連呼していた。
 その頃になると、ソレイユはちょっと落ち込みながらも口は積極的に動いている。
「ほうひえは……」
意外と食べるビショップの男性が咀嚼したまま話し始めた。すると、汚いからとシリエルの女性に耳を引っ張られ怒られる。彼は急いで飲み込むとキエラに顔を向けた。
「ええっと――クランに属してます?」
「お、来た口説きモード」
いつものことかとみんな口を揃えている。
「私――こう見えて、クランの盟主でして、貴女のような素敵な方を待っておりました!」
ちなみに皆まで言わなくても分かるが、誰も止めるものはいない……
「ちょっと待て!」
いや、ここにいた……
「面白い展開になってきたぞ」
エルは出来上がったお茶を飲みながら茶番劇を観賞する。
 グラディエーターの男性は、キエラの元に来ると跪いて大分オーバーにアプローチをし始めた。
「俺盟主じゃないんだけど、君みたいな人なら盟主も気に入ってくれるよ。まあ、他にソードシンガーいるけどとっつき難くてね……」
「じゃあ、俺も……」
ソレイユも立ち上がると、ニコニコして彼女の前に来るが――――
「クラン入ってるよね」
 それに彼女は頷くとさらりと二人の心を打ち砕く。
「ええ……入ってます」
「やっぱり」
「今すぐ脱退して私のところに来るのです! 来てください!」
ビショップの男性は彼女の手を握って猛烈なアプローチを始める。だが、グラディエーターの男性も負けてない。
「こっち来ると、もれなくいい子が付いてきます」
「いい子って?」
ソレイユが聞くと、彼はフフフと笑う。
「嫁探し候補多数! 俺含む!!」
「頑張れ、年上女房……」
エルがお茶を飲み終わってまた注ぐと、わざと音を立てて飲み始める。
「え? 勝手に決めないでよ!」
キエラが抗議したが、彼は不敵な笑いを見せた。
「逆ハーレムね」
ダンサーの女性は想像して一人ニヤついていた。彼女の心は今最高に大妄想の至福のときを過ごしているに違いない。
「……今のところはどこにも行く気はありませんから……」
「クラハンとかしないの?」
「うちはそういうところでは――それに、私がいるのはちょっとした嫌がらせで……」
「ふうん……どんな?」
「それは、秘密です」
そう言って微笑む彼女の顔が少し悲しそうに見えた感じがして、聞きたい欲求が抑えられてしまった。
 そして、しばしの無言の空間が訪れる――
「……じゃあ、ここでずっといるのもなんだし、片付けましょうか……」
-- 続きを読む --

[edit]

その2 





 DVC(ドラゴンバレーケイヴ)の入り口について暫くすると、何人かの冒険者が集まってきた。二人のクランの者もいれば、親しく話してくる違うクランの者もいる。詳しく聞くと、Aグレードのローブを製作する人がいるというので、そのコアを得るためのクエストをしてるというのだ。
 ソレイユはキエラを紹介すると他の面々も挨拶を交わした。
彼女は女性のエルフにしては長身で、ソレイユとほとんど背丈は変わらなかった。むしろ少し高いくらいか……
その中の一人が、彼女の持つ剣に興味を持つ。
「それって……?」
「え? これは、ナイトメアという剣で……」
「俺の鎧と同じ名前だ」
ソレイユは彼女にとても合わない不気味な剣を不思議に眺めていた。
「たまに、ダークエルフとか装備してるのを見るわね」
別な人が近くにいる仲間のダークエルフを見ていた。その人は女性のダンサーで、重蒼狼を装備しレイドソード二刀を持っている。
「良く手入れされてるわね。少し持たせてもらってもいいかしら?」
女性のダンサーの言葉にキエラは少しその人物を見つめていた。しかし、直ぐに顔を俯かせ一歩引いたのだ。
「別に盗る気はないわよ。見せてもらいたいだけ……」
 しかし、彼女は顔を曇らせている。
「ごめんなさい……これは念が強すぎて、私以外の人が持つとあまり良くないって言われてて――」
 それを聞くと、女性はそれじゃ仕方ないわねと手を引いた。他の人も何か曰くがあるのだなと思って、これ以上剣に関しては追求する事はやめたのだ。
 多かれ少なかれ数々の場数を踏んだ者達には、言いたくない歴史もある。冒険者としての立場は世間ではそれほどいいものではない。討伐や警護など雑用ばかりがほとんどで、名を立てるような事件などほんの一握りの者達しか経験する事が出来ない。それでも戦うのは、それぞれの思惑があってのことなのだ。
「じゃあ、揃ったところで行こうか」
ソレイユはニッコリ微笑んで注目させるために手を叩く。
「え~と、この先の場所でモンスターを倒してクエストアイテムを手に入れます。補助の分担は前と同じで……踊りは……そこのところ調節して下さい。では、よろしくお願いします!」
頭を下げると無事に戻れることを祈っていた。
 ハイネスでは土着の水の神と、移住してきたエヴァを信仰するエルフたちの友好関係から生まれた場所であった。元々エヴァのお隠れになった湖と神殿があり、その発掘で神官達とそれに従事するエルフたちが移住してきたのだ。土着の人々は共に同じ水の神を信仰するエルフを歓迎し、今に至っている。
 その為、ソレイユのような人間とエルフの混血も数多く存在したのだ。
 しばらくして、目的の場所に到着した面々はそれぞれ配置に就く。
「俺が引きます。エル、ターゲットリーダーよろしく!」
「まかせろ!」
 モンスターをヘイトで誘うと、それを手際よく倒していく。そして、口々にクエストアイテムが手に入ったと声を上げる。
-- 続きを読む --

[edit]

外伝UPその1 

え~本編には今のところあまり関係のない人たちが出てきます。
外伝は読まなくても本編には差し障りないですから大丈夫ですが、後で出てくる人たちなのでその伏線として楽しんでいただければ幸いです。


では!

あらすじ……


1人のエルフは悪夢に悩まされていた。昔あった苦しい時の夢……助けたくても助けられなかったあのときの思い出を引きずったまま、月日が過ぎていったのである。
そんな日々で、その人物は罪滅ぼしのためにドラゴンバレーでアンデットたちを倒す日々が始まる…来る日も来る日も倒しているが、彼女の心は癒されぬまま日時だけが過ぎて行ったのである。

そして……彼女は眠りについた。また悪夢にうなされることを感じながら――――――


本編とは違うもう一人のソードシンガー話・・・
-- 続きを読む --

[edit]

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

カウンターです